同和火災コレクションについて(第2回)-コレクションの調査と公開


このコラムではギャラリーを運営するあいおいニッセイ同和損保が所蔵するコレクションに関することをお伝えしていきます。前回は同和火災コレクションの由来についてお伝えしました。今回は廣瀬さんが蒐集し、会社に寄贈したコレクションのその後についてお話ししていきます。

コレクション蒐集の動機と初めての公開

廣瀬さんが古くからの災害関連の資料を蒐集したのは、関東大震災の時に共同火災の責任者として被災者対応の矢面に立ったことがきっかけだったと言うことは前回お話しました。

氏の次男廣瀬二郎氏によれば、「父は、何でも大事に遺すほうであった」、例えば入社以来の辞令がスクラップブックに整然と保存されていたとのこと。コレクターとしての几帳面な人柄がうかがわれます。

では一体何のために蒐集したのか?またどの様にしたいと考えたのか?

廣瀬さんが、自身のコレクションを最初に公開したのは、昭和7年の関東営業部ビル新築時。さらに昭和11年、創業30周年事業の本社ビル新築落成の際には、「火災、震災、交通に関スル蒐集品展覧会」を開催した記録が残っています。目録挨拶文の中には「小生ガ大正震災以後蒐集セルモノノ一部ヲ陳列スル事ト致シマシタ、蒐集品ハ主トシテ各種保険ニ多少ナリトモ関係アルモノと思ツタモノヲ集メタノニ過ギマセン」とあります。保険業に携わる者の興味として蒐集を行ったことが分かります。またこのときは講演会が開催され、防災と損害保険の啓蒙活動を行った記録もあり、コレクションの公開を通じ何らかの役に立てたいという思いが感じられます。

展覧会目録

共同火災本社ビル(大阪)

コレクションの活用

その後昭和20年頃、コレクションの内、保険に関わるものと災害に関わる多くの資料が会社に寄贈されました。

では、その後資料はどの様な運命を辿ったのでしょうか?

昭和23年以降、新しく設立された日本損害保険協会を通じて、社外に貸し出された記録が残っています。日本各地の百貨店で防災展などの展示が行われました。昭和23年名古屋市の丸栄百貨店では10日間で4万人来場、24年には新宿三越百貨店「防火展覧会」、横浜市の「燃えない都市」展覧会など各地で好評を得るなど、多くの貸出依頼の記録が残っています。しかしその後は徐々にその頻度は下がり昭和40年頃を境に、一旦忘れ去られてしまったようです。

昭和63年春、西天満の大阪本社ビルの倉庫で、20年以上誰の目にも触れず埃に埋もれた資料が偶然に再発見されました。発見した総務部員によって一点一点カメラで撮影され、目録が作成されるなど本格的な整理がすすめられ、傷んだ資料は専門家によって修復が行われました。コレクションが良好な状態を保って今に伝わっているのはこのときの処置に依るところが大きいといえます。

東京大学新聞研究所に資料の価値を問い合わせると共に、その活用方法についても検討し、「横浜絵」「開化絵」はカレンダーの図案やアニュアルレポートの表紙に使われました。平成4年には、東京茅場町の社屋に併設された同和火災ギャラリーのオープン記念で一般公開されています。

ただしこの段階では社外への貸出については未だ再開されなかったようです。

災害史資料の専門的検証と本格的公開がスタート

平成13年同和火災はニッセイ損害保険と合併、平成22年にはあいおい損害保険と合併して現在のあいおいニッセイ同和損害保険となっています。この間損害保険業界では、多くの会社が合併統合を繰り返し大きな変革期を迎えていました。こうした大きな状況変化の中でコレクションの整備、活用についても一旦立ち止まることになったようです。

合併が一段落し、貴重な資料をより深く専門的に再検証し、広く社会に還元する必要があると言う機運が再び高まったのは約10年後です。

具体的な作業はその知見を持つ専門機関に依頼することになり、会社の美術アドバイザー野地耕一郎氏の紹介で平成31年京都府京都文化博物館へ寄託されました。学芸員の方々に加え、東京大学地震研究所はじめ多くの専門家の方々により資料の全貌とそれぞれの資料の内容が解明されていきました。

この作業の集大成としてコレクションの大規模公開が実現、NHKサービスセンターの企画協力を得て「伝える-災害の記憶展」の巡回が始まりました。令和3年3月京都文化博物館を皮切りに、令和4年3月山梨県立博物館で展示が行われました。UNPEL GALLERYでも令和3年から毎年9月にテーマを定め展示を行っています。

蒐集されたコレクションを、社会共通の貴重な資産としてきちんと保存管理し、内容を研究し、展示公開を通じ社会へ還元することで初めてコレクションの存在意義が実現していくと考えられます。

そしてそのことが、この資料を蒐集し、会社へ寄贈した廣瀬さんの遺志の実現ではないでしょうか。

京都文化博物館(令和3年3月)

山梨県立博物館(令和4年3月)

【動画】伝えるー災害の記憶 お江戸の厄災 あいおいニッセイ同和損保所蔵災害資料(東京展)

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